芝浦工業大学の研究グループは、アルミニウム合金の保護皮膜がサビにくくなる要因をAIで分析しました。
膜厚や表面粗さなど4つの物理的特徴から、孔食電位を予測するモデルを構築しました。
表面粗さの役割が、膜厚約2,200nmを境に防食から腐食因子の侵入経路へ変わる現象を発見しました。
本成果は2026年8月18日、Nature Portfolioの『npj Materials Degradation』に掲載されました。
記事の概要
芝浦工業大学工学部の石崎貴裕教授らは、蒸気コーティング法で形成したベーマイト皮膜を研究しました。
研究では、膜厚、表面粗さ、結晶子サイズ、基板の欠陥密度を物理記述子として扱いました。
5種類の機械学習手法を比較した結果、ランダムフォレストが最も高い精度を示しました。
予測精度は決定係数R2=0.670となり、製造条件を使った従来モデルのR2=0.557を上回りました。
SHAP解析では、耐食性を最も強く左右する要素が表面粗さで、次いで膜厚だと分かりました。
ALE解析では、表面粗さが大きい皮膜で、膜厚約2,200nm未満では保護に働くと示されました。
一方、膜厚が約2,200nm以上になると、表面粗さが腐食因子の侵入経路へ変わりました。
研究グループはこの役割の切り替わりを「形態的レジームシフト」と名付けました。
記事のポイント
- 4特徴で耐食性を予測: 膜厚や表面粗さなど4つの物理的特徴から、アルミ合金皮膜の孔食電位を予測するAIモデルを構築しました。
- 従来モデルを上回る精度: ランダムフォレストの予測精度はR2=0.670となり、製造条件ベースの従来モデルR2=0.557を上回りました。
- 粗さの役割が反転: 表面粗さは膜厚約2,200nm未満では防食に働き、それ以上では腐食因子の侵入経路へ変化しました。
このニュースがもたらす影響
- 導入を検討する企業: 物理特徴を基準に耐食性を評価できるため、装置や試作規模が変わる案件でも、製造条件の再現ではなく膜厚と粗さの組み合わせを軸に実験計画を組むことが求められそうです。
- コーティング事業者: 表面粗さを単独で高めるのではなく膜厚との境界で評価する設計思想が示されたため、競合各社は既存の品質指標や提案資料を、要素間の相互作用を含む説明へ見直す可能性があります。
- 材料研究者: 予測精度だけでなく、SHAPやALEで性能要因と転換点を説明する構成が示されたため、今後の材料開発では、モデルの解釈性を実験条件の絞り込みや設計根拠に組み込むことが求められそうです。
このニュースの背景
従来は製造条件と耐食性を結び付ける評価が中心でしたが、皮膜の構造的特徴同士には強い相関があり、個々の寄与を切り分けにくい状況でした。
同じ製造条件でも装置の違いなどによって皮膜構造が変わるため、製造条件に依存しない材料設計指針が求められていました。
こうした課題に対し、物理記述子を機械学習に入力し、SHAPやALEで予測根拠と要素間の相互作用を確認する手法が用いられました。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純)工学部・石崎貴裕教授(先端材料研究室)の研究グループは、独自技術である蒸気コー…
https://www.atpress.ne.jp/news/630987